停車する列車は1時間に1本程度、乗降する人は少ないけれど降りたらそこに何かがある―。今回は京都丹後鉄道の福知山駅から宮津駅までを結ぶ宮福線の中で、ちょっぴりノスタルジックで途中下車したくなる魅力的な駅をご紹介します。写真で旅気分を味わってくださいね。
京都丹後鉄道路線図はコチラ
今回はJR福知山駅で京都丹後鉄道に乗り換え、列車でコトコト北上していきます。
福知山の住宅街を抜けて山里へ―「二俣駅」
まずご紹介するのは福知山駅から9駅目、大江山の麓にある「二俣(ふたまた)駅」。住宅街からトンネルを抜け、山里の雰囲気になってきたなぁと思ったところで到着する駅です。宮福線は上り下りを1つの線路のみで運行する単線なので、宮津駅方面に向かって左側にホームがあります(画像参照)。ポツンと立つ小さな待合室と線路のカーブがなんとも情緒あふれる光景です。
駅の前には宮川という綺麗な川が流れています。川沿いの木は桜なので、春には美しい桜並木が見られるのでしょうね。
ホームへはこの白い建物をくぐって入ります。この建物は駅舎かと思ったら公民館なんですって! 二俣駅は駅舎がなく、ホームのみの無人駅。正式には駅ではなく停留所に分類されています。
待合室の黄色い椅子もレトロでかわいい。
ホームで写真を撮っていたら目の前を特急列車「丹後の海」が通過していきました。ブルーの車体がカッコいい!! 二俣駅は特急が止まらないので、そのスピードと迫力にびっくりしました。ホームで列車を待つ際は十分に注意してくださいね。
■■駅を降りたらこちらもチェック「猿田彦神社」
列車に乗っていると窓から見える、趣ある鳥居。駅を通過する度に気になっていたので、この機会に訪ねてみると……
猿田彦神社のものでした。
二俣の地は、北に「元伊勢内宮 皇大神社」(※)、南に「元伊勢外宮 豊受大神社」(※)が立つ、神守る里なのです。御祭神である猿田彦神は開運招福、街道を守り災害を防止する交通安全の神として信仰されています。地元では、神代の時代に元伊勢内宮 皇大神社を訪れていた神々が出雲へ帰る際、同社の猿田彦神が立ち会ったと伝わることから「立会さん」と呼んでいるそうですよ。
※伊勢神宮が現在の三重県伊勢市に座する前に鎮座し祀られていたという伝承を持つ神社。全国に20数か所あり、内宮(天照大神)を祀っていた神社は元伊勢内宮、外宮(豊受大神)を祀っていた神社は元伊勢外宮と呼ばれています。
■■INFORMATION■■
二俣駅
京都府福知山市大江町二俣
元伊勢内宮が鎮座する―「大江山口内宮駅」
再びのどかな景色の中を走り、短いトンネルを抜けると「大江山口内宮(おおえやまぐちないく)駅」に到着します。こちらは宮福線では珍しく上下2線の間に島式のホームがあり、列車の行き違いが可能な駅。ゆえに、すれ違いのために数分停車することもあり、その際はホームに降りて写真撮影をすることができます。
山に挟まれたホームは、ノスタルジックな雰囲気が満点!
ちなみに雪の日も旅情があって素敵なんですよ。写真のトンネルをくぐると駅に到着します。
訪れた時は列車が停まっていなかったので撮れなかったのですが、写真の右側にあるミラーに列車を映しながら撮影するのも人気なんですって。
大江山口内宮駅も駅舎は無く、トンネルを入り(写真上)、階段を上って(写真下)直接ホームに上がるスタイル。トンネルと階段がちょっと暗いのでドキドキします。
駅のすぐ下を走る道路から見るホームも、風情があって素敵ですよ。
■■駅を降りたらこちらもチェック「元伊勢内宮 皇大神社」
駅を降りて徒歩15分ほど、大江山口内宮駅の名の由来となった元伊勢内宮 皇大神社へ。杉の古木が立ち並ぶ坂道と自然石の石段を上った先に本殿が立っています。元伊勢内宮 皇大神社は全国に数か所ある元伊勢内宮のひとつ。伊勢神宮が三重県に鎮座する54年前、天照大神がこちらに鎮座されておられました。
さらに時間が許すなら、本殿からさらに東へ行った天岩戸神社もお参りしてはいかがでしょう。宮川渓流の岩壁にはりつくように立つ神社で、神々が座したと伝えられる巨大な岩「御座石」や「神楽石」などがあり、神秘的な空気に包まれています。
■■INFORMATION■■
大江山口内宮駅
京都府福知山市大江町内宮
元伊勢内宮 皇大神社
京都府福知山市大江町内宮217
℡ 0773-56-1011(9:00~16:00)
境内自由 社務所8:00~16:00
長~いトンネルを抜けると……「辛皮駅」
宮福線最長の普甲トンネルを抜けた先に現れるのが、秘境ファンに人気の「辛皮(からかわ)駅」です。周囲は田んぼと民家がポツポツと立つ、静かな無人駅。ホームは高台の上にあります。
駅へは坂道を上り(写真上)、さらに階段を上った先(写真下)。こちらも駅舎はなく、ホームのみ。
ホームのベンチに座って列車を待っていると、静けさの中からも聴こえてくる蝉の鳴き声と風の音に、ちょっぴりセンチメンタルな気分になってきます。これも旅の醍醐味。
無人駅なので駅を降りたら、きっぷはこの箱へ。
ホームからは辛川の集落が一望できます。写真には写っていませんが、駅のすぐ側を流れる川はゲンジボタルやカジカガエルの生息地なんですって。
■■駅を降りたらこちらもチェック「元普甲道」
駅を降りて宮津方面へ進むと、平安時代から江戸時代まで多くの人々が利用した元普甲道があります。この道は宮津市と福知山市大江町を結ぶ古道で、ところどころ古い石畳も残っていてす。昔の人もこの道を歩いたのかと思うと感慨深いものがあります。
■■INFORMATION■■
辛皮駅
京都府宮津市小田
おまけ:京都丹後鉄道では駅の愛称もチェック!
京都丹後鉄道の駅には自治体が命名した愛称が付いている駅がいくつかあるんですよ。宮福線では福知山市エリアの駅に愛称があり、二俣駅は「和紙の里 猿田彦神社前駅」、大江山口内宮駅は「元伊勢内宮駅」の名が付いています。イラスト入りの愛称名板もあるので、訪れたらぜひチェックしてみてくださいね。