こんにちは!KYOTOSIDE編集部員&ライターの江下です。
知られざる京都の魅力を発掘する!ということで、京都府全体にスポットを当てて、何か素敵な情報はないかな~とリサーチしていたところ、「京都の北の方で、地元食材を使った凄いグルメ列車が走ってる」との情報を発見!
その列車の名前は、丹後くろまつ号。丹後…?丹後って、京都の上の方?くらいの知識しか持ち合わせてなかった編集部員…これは、実際に現地に行ってみて、どんな列車なのか自分で確かめてみようと思いました。
早速、取材アポを取り、指定された日時にカメラマンと一緒に、始発となる天橋立駅へと向かったのです。
天橋立と言えば、日本三景のひとつ。全長3.6キロ、大小約8000本の松が茂る、とっても珍しい地形の砂浜です。昨年、イグ・ノーベル賞の股覗きでも話題になりましたね。初めて見られるな~とワクワクしながら駅に降り立ったところ、わたしとカメラマン、まずボー然と立ち尽くしました…。
そう、この取材日は全国的に大雪で天候が荒れに荒れた日。日本海側に面する天橋立も、猛吹雪で全然見られないという悲劇…吹きすさぶ雪を目の前に、列車は走るのかしら…と心配になるわたし達…。
そんなわたし達を出迎えてくれたのは、京都丹後鉄道(WILLER TRAINS株式会社)の広報担当・増井さん。
雪の心配をするわたし達に、このくらいなら大丈夫!と心強い言葉。ホッとする我々取材チーム。
「京都丹後鉄道には、丹後あかまつ号・丹後あおまつ号・丹後くろまつ号という3つの観光列車があります。丹後くろまつ号は、その中でも地元丹後の食材を使った料理を出すレストラン列車です。今日はランチコースに実際に乗車してもらい、どんな列車なのかご自身で是非、確かめてみてください。」
元々、九州地方で全国に先駆けて運航されていた観光列車。西日本では、この京都丹後鉄道(当時は北近畿タンゴ鉄道)が初めて導入したのだそうです。まず、カフェスタイルや内装を充実させた丹後あかまつ号、通常運賃でも乗れる丹後あおまつ号が運航を開始し、評判が良かったため2014年5月、新たに誕生したのがレストラン列車丹後くろまつ号なのだそうです。
そんなお話を伺っているとやってきたのは…小さな可愛らしい1両編成の黒列車!今から乗車する、丹後くろまつ号です。黒い車体に金色で描かれたロゴから、高級感を感じます。
車内に入ってみて、更にビックリ!電車の中とは思えない、洗練された美しい空間が広がっていました。
それもそのはず、こちらは、工業デザイナー水戸岡鋭治氏のデザインなのだそうです。水戸岡さんと言えば、九州の顔となったクルーズトレイン「ななつ星in九州」のデザイナーとして有名な方ですね。鉄道ファンのみならずとも、心をグっと掴まれる素敵なデザインが特徴です。
内装には天然木をふんだんに使ってあるそうで、木のぬくもりを感じられてホッと落ち着く空間になっています。
窓にはブラインドのかわりに京すだれが掛かって、なんとも和モダンな雰囲気。
本日予約されていたお客さんが続々と乗り込んでこられて、12時24分、丹後くろまつ号はゆっくりと発車しました。
天橋立を出発し、終点の豊岡駅(兵庫県)までのコースで、約2時間半のプチトリップ。これからどんな列車旅が始まるか…ワクワクです!
発車してすぐに、アテンダントさんがランチコースの準備を始められました。確かに、お腹もすく時間…。
今年の1月〜3月までのランチコースは、天橋立ワイナリーレストランによる、丹後くろまつ号のための特別コース。
それぞれのテーブルにはタブレットが配置されており、お料理の紹介とともに生産者のメッセージ動画を見られました。今から出てくるお料理がどんなものなのか、シェフのこだわりのポイントなど、見るとますますお料理が待ち遠しくなる粋な演出です。
お料理はコース仕立て。ひと品ずつ、順番に出てきます。
アミューズは丹後産のサザエの香草焼き。サザエの磯の風味とガーリックが食欲を刺激します。
前菜の丹後産鮮魚のカルパッチョ、本日は伊根のブリを地元野菜と赤ワイン塩でいただきます。ピンクの塩が可愛く、またブリは脂がのってまさに今が旬!しゃきしゃきの野菜と一緒にいただくのはまた格別です。
出た〜!メインのお料理は、和牛の天橋立赤ワイン煮込み。
天橋立に自然堆積する牡蠣殻や松葉を利用した土づくりから生まれる、丹後産の葡萄100%で作られた天橋立ワインは、ブラックベリーとスパイスの香りに、調和のとれた味わいで、お肉との相性が非常に良いのだそうです。このワインで煮込んだ和牛はしっとり柔らかく、口の中でワインソースの濃厚な味わいが肉の旨味とともにジュワッと広がります。
ランチコース全体はこんな感じ。
丹後産コシヒカリで作られたもっちもちの米粉パンに、同じく丹後産キノコをたっぷり使ったスープも付いて、充実の品数、ボリュームにお腹もいっぱいです。
景色を見ながら、また、同乗者とおしゃべりを楽しみ、ゆっくり食事を堪能しながら、列車は進んでいきます。
道中は、アテンダントさんが随所でガイドアナウンスをしてくれます。
丹後発祥の高級絹織物 丹後ちりめんについてや、峰山に伝わる日本最古の天女の羽衣伝説、全国でも珍しい狛猫がいる木島神社の話、などなど。聞いていて興味深いものがたくさんありました。京都丹後鉄道沿線には、機織りやヨットなどをモチーフにした外観がとても珍しい駅舎がいくつかあるそうで、今後、ひとつひとつ掘り下げていきたいなと。丹後、まだまだ知らないことだらけです!
道中、網野駅で列車は1時間ほど停車します。ここでゆっくり食事に集中してもらい、最後にはデザートも。今回のデザートは、城崎スイーツのおぜんざい。寒い冬の日には、ほっこりあたたかいおぜんざいが沁みますね。
ランチを食べ終えてゆっくり談笑していると、列車が再び動き出しました。お腹が満たされると、外の景色にも目がいきます。
乗車当初はあまりの吹雪にどうなることかと思っていましたが、列車の外に広がる一面の銀世界には目を見張るものがありました。まさに、今日だからこそ見ることが出来た一期一会の光景に、乗客の皆さんもうっとり…。
丹後くろまつ号は、ランチコースのほかに、地元のパティスリーによるコース仕立てのオリジナルスイーツを堪能できるスイーツコース、日本酒ソムリエが厳選した数種類の丹後地酒と地元名産料理とのマリアージュを楽しめる地酒コースがあります。
そして、運行ルートも、平野と森林地帯を走る豊岡ルート、海岸線沿いを走る西舞鶴ルート、山間部と田園地帯を走る福知山ルートの3コースがあり、3ヶ月ごとにルートを変えて走行します。
スイーツやお料理も3ヶ月ごとに提供元が変わるため、リピーターが多い理由もうなずけます。1人旅の方も多いのだとか。お1人で、1日3コースとも制覇した強者もいるそうですよ。
乗車されていたお客さんにもお話を伺ってみたところ、4世代が揃った親戚旅行だという御一行や、前回くろまつに乗車してファンになり今日は2度目の乗車だというご家族、お姉さんの誕生日でサプライズ旅行だという姉妹…皆さん様々な理由でくろまつに乗車し、それぞれ楽しく時間を過ごしておりました。
「本格的なお料理に感動した」
「普段は見られない景色でお食事ができて、心に残る思い出になった」
皆さん、笑顔で取材に答えてくださいました。ありがとうございます!!
ガイドアナウンスから食事の給仕まで、おもてなしのプロであるアテンダントさん。
アテンダントリーダーである前田さんにも、お話を聞いてみました。
「地元の方々も地域の活性化を望んでおられ、単なる食材の仕入れ先ではなく、一緒に地域を盛り上げようと協力しあって運行に至っています。わたし達スタッフも、乗っていただくお客さまに丹後の魅力を伝えて地域貢献したいと考えています。たくさんの方にまたこの地へ来ていただきですね。ちなみに、今回の豊岡ルートでのわたしのオススメポイントは、甲山と馬路峠です。」
お話を伺っていた時、その甲山(かぶとやま)が見えてきました!
高さ192m。山の形が甲(かぶと)に似ていることからこのように呼ばれているそうです。山頂の展望台からは、久美浜湾や、その奥に広がる日本海まで一望することが出来るのだとか。こんもりと盛り上がった山は真っ白に雪化粧されており、こんな光景も今日ならではですね。
14時過ぎ、列車は久美浜駅に到着しました。ここでは列車から一旦降りて、駅マルシェへ!
丹後くろまつ号のランチコースでは、この久美浜駅マルシェがセットになっており、ゴハンのあとに地元特産品のお買い物を楽しめます。
名物・鯛せんべいや、地元の農家さんが作った季節のお野菜、猪や鹿のカレーに果実のジャム、いろいろあって見てまわるのも楽しいです。お買い物って、なんかテンション上がりますよね。
珍しいところでは、バラ寿司ストラップも!!バラ寿司とは、甘辛く煮付けたさばのそぼろを使った、全国でもここだけしかない丹後名物のお寿司。丹後では各家庭で作られ、ハレの日に食べるご馳走なのだそうです。
お買い物を終えて久美浜駅を出発。終点の豊岡まであともうわずかです。
久美浜を出てしばらく進むと、周りが森林地帯に…アテンダントの前田さんが言っていた、もうひとつオススメポイント・馬路峠(まじとうげ)に差し掛かりました。
まさに森の中を列車が駆け抜けていきます。運が良ければ、鹿やコウノトリも見られるそう。今日は雪景色なので、動物は見られませんでしたが、森と雪が織りなす絶景に、ただただ目を見張るばかりでした。
ここが京都だと言ってもおそらく信じてもらえない・・でも、ここも確かに京都なのです。
県境の長いトンネルを抜けると、そこは兵庫であった…という訳で、このトンネルを抜けると、もう終点の豊岡です。ここから、城崎温泉に行かれたり、京阪神に帰られたり、皆さん、思い思いの場所へ。2時間半の長いようであっという間の列車旅も、終わりの時です。
記念乗車証に乗車スタンプを押して、お土産に。
丹後くろまつ号で行く、丹後の魅力が詰まったグルメな列車旅は、想像以上に楽しめる内容でした。
都会の喧騒をはなれて、非日常の世界へ。列車に揺られて、厳選された丹後グルメを味わい、雄大な景色を眺めながら日頃の疲れを取り払う…ちょっとした癒やしの旅はいかがでしょう?
親しい人と過ごす、記憶に残る大切な時間。ここでしか出合えない何かがきっと、旅の終わりに見つかるのではないかと思います。
■丹後くろまつ号 運行情報
【予約方法に関するお問い合わせ】
0772-25-2323(平日9:00〜18:00)
【チケット購入】
丹鉄指定駅、JTB、日本旅行、近畿日本ツーリストの各店舗、インターネットで3ヶ月前から購入可能
※丹鉄指定駅、インターネットは乗車日の3日前まで販売
JTB、日本旅行、近畿日本ツーリストの各店舗乗車日の5日前まで販売
【運行日】
金・土・日・祝
※平日は貸切の場合のみ運行
【金額】
ランチコース〜MANPUKU〜 9,200円
スイーツコース〜BETSUBARA〜 5,000円
地酒コース〜TASHINAMI〜 7,000円
運行ルートなど詳しくはこちらから
https://trains.willer.co.jp/matsu/train/about.html