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江戸時代のガイドブックにも載った! 知る人ぞ知る穴場・松花堂庭園

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ご存知でしたか?八幡市に国の史跡・名勝に指定されている日本庭園があるんです!

その場所の名は「松花堂庭園・美術館」。江戸初期に活躍した文人僧・松花堂昭乗ゆかりのスポットで、園内にはせせらぎあり茶室あり、自然あり……。市内の有名な庭園と比べて人影も多くなく、ゆっくりと散策を楽しみたい方に人気の隠れた名所なんです。

今回は、通常なら利用するのに申し込みが必要な茶室にも潜入。特別に写真も撮らせてもらいました

 

松花堂昭乗ってどんな人?

松花堂昭乗(1584〜1639年)。石清水八幡宮のある男山の山中にかつてあった僧坊「瀧本坊」の住職であり、阿闍梨となった高僧。書・画・歌・茶の湯など幅広いジャンルで才能を発揮し、特に書は本阿弥光悦や近衛信尹と並んで「寛永の三筆」に数えられるほど堪能でした。晩年には泉坊書院の一角に「草庵・松花堂」を建てて隠棲。明治の神仏分離令・廃仏毀釈を受けて、その建物は松花堂庭園に移され、保存されることになりました。

緑に囲まれ、変化に富んだ散策路

総面積約2万2000平方メートル、甲子園球場のグラウンド約1.5個分という広い敷地は、庭エリアと美術館などのエリアに分かれており、庭も大別すると3棟の茶室がある外園、史跡・名勝に指定されている内園があります。

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外園には約40種類の竹・笹類をはじめ、多彩な花木が植えられています。大正・昭和の歌人である吉井勇は昭乗やこの庭を詠んだ作品を残し、谷崎潤一郎や志賀直哉といった文豪たちも訪れて写真をパシャり。園内を彩る豊かな自然に、きっと創作のインスピレーションを得たことでしょう。散策路の風景も変化に富んでいて、飽きることがありません。

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夏の始めならみずみずしい緑とともに、水辺に咲く紫陽花なども見ることができます。池にはまるまると肥えて気持ちよさそうに泳ぐ鯉たちの姿も。食欲旺盛なので、ぜひ餌をあげてください(笑)庭園受付にて1袋100円で販売されています。

茶室その1 千宗旦好みの渋い「梅隠」 

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松花堂庭園には三棟の茶室があり、申し込めばお稽古やお茶会のために利用することができます。その一つが、こちらの「梅隠」。千利休の孫で「放浪の茶人」と呼ばれる千宗旦好みの茶室を再現したものです。一見、右下のにじり口から入ると、茶室に上がれそうですが……。

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中にはさらに内露地(茶室に至る庭)があり、左の写真の貴人口(きにんぐち)から茶室に上がるという凝った造りになっています。四畳半の茶室は、網代(あじろ)の天井に土床(つちどこ)と、「侘び寂び」を強調するしつらえ。梅隠の前には水琴窟があり、突き出た竹に耳を近づけると、澄んだ涼やかな音色が耳をくすぐります。

茶室その2 昭乗の茶室を再現した「松隠」

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こちらは、昭乗が住まいした瀧本坊に小堀遠州が建てたと伝わる茶室「閑雲軒」を再現したもの。閑雲軒は男山の傾斜にあり、高さ7メートルの懸造りと呼ばれる清水寺の舞台のような建築方法で建っていたそうで、この茶室はその風情に近づけるため、高床式で再現されています。客は縁(廊下)の前に設けられた石段を上がって茶席へ。

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内部は九畳の広間と四畳台目の茶室、水屋などからなり、茶室に座するとやや見下ろす形で庭園の景色を望めるのが新鮮♡ 毎月第2日曜の10時~15時には月釜会(席代800円)が開催されているので、そちらに参加してみるのもオススメです。※初釜会や忌茶会などにより、開催内容が変わる場合があり(8月はなし)。要確認。

茶室その3 数奇屋造りのおもてなし空間「竹隠」

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木々に隠れるように佇むこちらは、新日鉄初代会長・永野重雄邸の茶室を写した「竹隠」。現代の数寄屋大工が工夫と技を凝らして建てた新しい名席です。こちらでは3~5月・10〜11月の各日曜10〜15時に日曜茶会が開かれています(600円・お菓子代含む・別途入園料必要)。

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「竹隠」は四畳半の茶室で、小間には珍しい琵琶床が設えられています。窓の上の装飾を見ると葦(ヨシ)を利用して曲線が描かれていたり、柱々で使用する木材を変えていたり……この茶室はすべてが「さりげなく贅沢」。日本らしいおもてなしの心を感じます。

貴重な建物が並ぶ史跡・名勝の内園へ

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庭の中央部分、塀に囲まれたエリアが内園。すらりと伸びた清々しい石畳を通って、園内に向かいます。

昭乗が晩年を過ごした草庵「松花堂」

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この茅葺の小さな建物が、昭乗が晩年を過ごした草庵「松花堂」です。寛永14(1637)年の建築で、その方丈庵の大きさはたった1丈(約3メートル四方)。二畳の間には、床の間と仏壇があり、入り口の土間には「おくどさん(かまど)」が設えられています。確かに風情はありますが……昭乗さん、生活するにはちょっとコンパクトすぎやしませんか!? かの偉人はミニマリストの先駆け的存在だったのかもしれません。

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網代地の天井には、移築時に土佐光武が元の絵を参考にして描いたといわれる極彩色の「日輪と鳳凰」の絵。奥に見える額「向雲」は昭乗の書と伝えられています。

表に掲げられた扁額(写真左上)も昭乗の書なのですが、じっくり見てみてください。もともとこの建物があったのは、石清水八幡宮がある男山の中腹。八幡宮の神様の使いが鳩ということで、文字の中に鳩が隠れているんですよ。何羽描かれているか数えてみてくださいね。

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画像提供:八幡市立松花堂美術館

ちなみにこちらの絵は、江戸後期の京都の名園ガイドブック『都林泉名勝図会 巻之五』に描かれた草庵「松花堂」の姿。周囲の景観も含めてほとんど今のままです。200年以上前の人と同じ光景を見ていると思うと、なんだか感慨深いですね。

いにしえの天皇も行幸された!? 泉坊書院

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こちらは、草庵「松花堂」とともに男山の山中から移されてきた「泉坊書院」です。玄関にあたる車寄せは伏見城の遺構といわれ、扉には豊臣秀吉の家紋である太閤桐が(写真右下)。書院造の客殿は戦国武将・小早川秀秋の寄進と伝えられ、庭に面する部分には、移築後にはめられた貴重な「舶来の板ガラス」が輝いています。

客殿の主室(写真左下)は九畳で、天井は格式高い折上小組格天井。奥に二畳の玉座が設けられており、後陽成天皇や孝明天皇が行幸された際、坐して日の出を愛でられたと伝えられています。

「松花堂弁当」の発祥地でもあった

こんな感じで見所たっぷりの松花堂庭園ですが、じつはこの地、今では当たり前になった「松花堂弁当」の発祥地ともいわれているんです。その起源は、農家が種入れとして使っていた十字に仕切った箱。これを昭乗が煙草盆や絵の具箱として使用し、昭和に入ってから、料亭「吉兆」の創始者が料理の器として利用し始めたといわれています。

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敷地内に「吉兆 松花堂店」が併設されているので、発祥地で松花堂弁当(4000円)を味わってみるのもオツなもの。竹林を眺めながら、京都らしい味わいに舌鼓を打ってみてはいかがですか。

併せて楽しみたい美術館・ミュージアムショップ

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庭園の散策後は、ぜひ美術館エリアへ。昭乗や八幡市に関わる展覧会が随時開かれており、併せて見学すれば楽しさが倍増☆ミュージアムショップ「おみなえし」では、お茶会でも人気の抹茶「銘・松花堂」(30グラム・1300円)をはじめ、オリジナルグッズや和雑貨、京都のお土産などを購入することができます。

 

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■■施設情報■■

所在地/八幡市八幡女郎花43-1
電話番号/075-981-0010
開園・開館時間/9:00〜17:00(入園・入館は〜16:30、ミュージアムショップは10:00〜)
休園・休館日/月曜(祝日の場合はその翌平日)、12月27日~1月4日
料金/庭園入園料400円、美術館観覧料400円
ホームページ/http://www.yawata-bunka.jp/syokado/index.htm

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