梅といえば和歌山ですが、実は“幻の梅”が京都にあること知ってました?しかもあま~い桃の香りがするんです!
京都駅から電車で40分、京都屈指の梅林の名所として知られている城陽市・青谷(あおだに)。ここで幻の梅「城州白(じょうしゅうはく)」が栽培されています。
5月頃に収穫される一般的な南高梅より時期がうんと遅く、6月下旬からいよいよ収穫を迎えます!収穫の季節、梅林を歩けば梅の香りが漂いとっても癒されますよ。
ここに幻の梅、城州白を使った加工品や青梅の直売所があると聞きつけやってきました。
こちらは梅専門店「青谷梅工房」。もともと小学校の教師だった田中昭夫(タナカ アキオ)さんが青谷梅林の里山の風景に魅せられて55歳で退職し、2011年にお店をオープンしました。
店内いっぱいプラムのような柔らかい甘さの香りで包まれ、ちょうど白加賀(しろかが)という品種の収穫が終わったところ。こちらは量り売りできるようです。
そんな田中さん、アラ還ながらも、梅林の保全、栽培、手入れ、商品開発、販売、営業、月1でBARと…日々、大忙し。四六時中、頭の中はずっと梅のことばかり。
そんな梅フリークの田中さん&青谷&城州白のスゴイところをご紹介します!!
【スゴ①】ミシュラン星付きの京料理店も御用達!「青谷梅工房」究極の梅干し
青谷でしかほぼ栽培されてない希少な品種「城州白」は、直径4㎝ほどある超大粒&肉厚が特徴。
一般に知られている南高梅と違うところは、桃のような甘いフルーティーな香りと肌質で、ちょっぴり楕円形のフォルムにうっすら薄毛、熟すと色が白くなることです。
紫蘇と梅を同じ畑で育てる風景も面白いところですよね。
下の写真は「白漬けうめ」540円。ミシュラン星付きの京料理店も御用達、プロも認める極上の味わい。塩分濃度10%に抑えた、角のない柔らかい酸味が絶妙の梅干しは、もちろん無着色、無添加。
たっぷりの果肉を、トマトに乗せて食べると甘味が増して、フルーティーなトマトに大変身。
「実は乳製品と梅って相性抜群なんです!チーズ×白漬け梅の相性がGOOD!!」他に田中さんのオススメは「京の梅しろっぷ」(200ml 1300円)は牛乳と混ぜると飲むヨーグルトのような味わいになるんだとか。
その他、梅シロップは冷たい水や炭酸で割るのは当たり前。日本酒、ビール、ウイスキーなどお酒で割ると女子好みに大変身するそうなので、ぜひお試しあれ!
ヨーグルトの酸味に合うようマイルドに仕上げた「梅ヨーグルトソース」540円。
完熟した城州白の贅沢な甘い香り&甘酸っぱさを閉じ込めた絶品「梅ジャム」150g540円。
【スゴ②】珍しい梅のクラフトビールが飲める梅酒BAR「梅月夜」
現在、青谷では約40の農家が城州白を栽培していますが、後継者不足の問題も深刻化しているんだとか。クラウドファンディングで資金を募って農家の青梅を購入したり、跡継ぎのいない梅林の世話を引き受けて保全に力を入れたりしています。
「青谷の梅農家は70歳ぐらいが働き盛り、わたしは63歳なのでまだまだ若手」(笑)と語る田中さん。さすが梅パワーです!80歳代でがんばっている農家さんもいるといいます。
2015年のある日、城州白を買ってくれる業者を探していたところ、クラフトビールの醸造を手掛ける京都・一乗寺ブリュワリーと縁あって、1年間試行錯誤の後、梅の地ビール「城州白ビール」が誕生したそう。
資金の調達方法だけでなく、京都で話題のクラフトビール醸造所とコラボするところも、さすが若手だけに発想がいまどき!!
梅ビールが飲めるスポットがまだまだ少なく、確実に飲めるのは月1回オープンする青谷梅工房内のアットホームな梅酒BAR「梅月夜(うめつきよ)」。(未だBARの看板はありません)
数量限定なので生ビールのみ。1杯500円。城州白ならではのフルーティーで爽やかな酸味とビールのコクがマッチして、今までに飲んだことのない新感覚のビールでした。7月より今年仕込んだばかりの新ビールが登場!
地元の城陽酒造が城州白など青谷の梅のみ使用し、3年以上かけてじっくりと熟成させた自慢の梅酒三種飲み比べセットは600円。
色目も濃く奥行きのある味わいの「梅酒原酒」。芳醇な香りと甘みを抑えたさっぱりとした口当たりの熟成梅酒「花小枝」。長期熟成のまろやかさと爽やかな甘味の「梅小枝」。
城州白のリッチな味わいを存分に堪能できる梅酒たちです。
さらに日本各地から集めた梅酒や、地元の酒蔵・城陽酒造の旬の日本酒も。ブランデーや日本酒、酒かす、紅茶をベースにした珍しい梅酒の数々にトークも弾みます~。
地元の新鮮野菜をふんだんに使ったヘルシーな梅に合うお料理と一緒にいただきましょう。写真は2人前、おまかせで用意してもらいました。
コースはおまかせ7品で2500円、一品は400円、料理のメニューは毎月変わります。
今回は城州白のコロッケ、豚の甘辛炒め梅肉がけなど梅のメニューも。クエン酸パワーで疲労回復効果バッチリです。
【スゴ③】名もなき青谷梅林を有名にしたインフルエンサーは明治の文人たち
江戸時代に「烏梅(うばい)」という媒染剤をつくる事から広がった青谷梅林。産業用の梅林として、今よりずっと規模が大きかったそう。明治に入って外国から薬品の媒染剤が入ってくるようになって、青谷梅林は急速に衰退しかけました。
そんな青谷の危機を救ったのが、村長ら地元の有力者たち。自分たちで地元PR誌「青谷絶賞(あおだにぜっしょう)」を発行しました。
それを見た田山花袋(たやまかたい※文学作品は『蒲団(ふとん)』が有名)などの多くの有名な文人たちが青谷へ訪れ、その素晴らしさを紀行文や歌に詠んだことで瞬く間に梅林のすばらしさが日本全国に知れ渡りました。
先進的な町のプロモーションが明治時代に既に行われていたなんて!びっくりですね。
【スゴ④】秘密基地は男のロマン!青谷梅林に竪穴式住居を作りました
イ〇ディージョー〇ズの大冒険チックな険しい山道を取材陣みんなでワーワーいいながら、車で飛び跳ねながら進むと、パッと道が開けて…そこには秘密基地が!
ドーンと竪穴式住居が鎮座。ここが今の田中さんの原点といいます。竪穴式住居が梅とあまりにもリンクせず…(笑)
少年が秘密基地を案内してくれるようなキラキラした眼差しが冒険家みたいで素敵すぎるので、ひとまず、田中さんの話を聞いてみることに。たっぷり語ってもらいましょう。
「小学校教員時代に、龍谷大学の好廣先生のお誘いで城陽市の自然を調べる『城陽生き物調査隊』を作り、地元青谷の方のご厚意で青谷梅林の農家さんに土地を借してもらったのがきっかけなんです」。
「子どもたちと一緒に月に1度、山へ入り竹を1本1本切って切り開き、地道に作業を重ねること3年。京都を代表する茅葺き職人の山田雅史さんの指導で、2014年に立派な茅葺の竪穴式住居が完成し、子どもたちがのびのびと自然体験活動ができる『くぬぎ村』が出来上がりました」。
「青谷の人に自然と引き寄せられて…。気づけば梅まつりと平行してここで町おこしのイベントを開催するまでに深い繋がりができていたんですよね。気が付けば100名ほどの人が『くぬぎ村』にかかわり、それはそれは賑やかでした」と嬉しそうに田中さんは語ってくれました。
最後に…
今チャレンジしていることは?と聞くと、「梅のフリーズドライを作ること」と田中さん。うれしそうに試作品を取り出し、試食をしながら、どんな人にたべてもらいたい?どういう売り方がいいかな?なんて田中さんと一緒に語っていると、不思議とヤル気がみなぎってきます♪
村づくりも、梅の活動についても「ひとつひとつ気になることを試しにやってみる」。小さなチャレンジの連続が明日に繋がり、やがては大きな“実”をつけることを田中さんは教えてくれたような気がしました。田中さんは、やっぱり冒険家だった(笑)
また近いうちに田中さんとおしゃべりしに、ちょっぴりディープな雰囲気と梅の香りがたまらなくいい梅酒BARへ、ふらりと訪ねてみようと思います。
■Information■
青谷梅工房
0774-39-7886
城陽市中出垣内73-5
9:00~16:00
日曜・祝日定休
※梅酒BAR「梅月夜」は月1回第3土曜日17:00~21:00(20:30 LO)、近鉄新田辺駅まで帰り送迎可(4名まで)。
予約、問い合わせは梅工房へ
JR奈良線「山城青谷」駅から徒歩5分 P4台