普段、スーパーで何気なく買っている卵。実はとっても奥深く、育て方や環境、エサ、水で、味や色が変わってくるんです。今回は京都府内で平飼い(鶏を地面に放して飼う養鶏法)で鶏をそだてている養鶏所の中から3軒をご紹介。それぞれ、卵かけご飯にして食べ比べてみたところ、それぞれに個性があり、違いがわかりました。みなさんはどれを食べてみたいですか?
WABISUKE「やどりぎプレーンのたまご」@宇治市
宇治の平等院から車で約15分、天ヶ瀬ダムにほど近い自然豊かな地にある「WABISUKE(わびすけ)」。その代表の岡崇嗣さんは、ちょっと変わった経歴の持ち主です。メキシコ留学中、途上国支援に興味を持ち、帰国後、自分なりの貧困国支援の形としての養鶏業を選択。国内の養鶏場で研修を受けるうちに、今のような鶏に優しい平飼い養鶏のスタイルにたどりついたのだとか。「先進国でもトップクラスの豊かさを誇る日本だから、生き物に対する考え方も前進させてほしいと思っているんです。平飼いでの養鶏も一つの選択肢になればいいなと思っています」と岡さん。
育てているのは羽が茶色の「ボリスブラウン」。一般の鶏よりも筋肉質で触れるとがっしりしているのが特徴です。鶏たちは24時間好きな時に好きなだけ砂浴びをし、水を飲み、食事をすることができるのでストレスフリー。だから普段はとても静かなんですって。そう聞いて、なんだか鶏さんたちの暮らしがうらやましくなってきました…。
岡さんに伺うと卵の味の決め手の9割以上はエサとのこと。ゆえにエサの60%を占めるトウモロコシ、大豆粕などの穀物類はもちろん遺伝子組み換えでないものを使用。動物性タンパク質は食べさせず、植物性100%飼料で育てています。焼き上がり時に卵独特の臭みがないので洋菓子店でも使われているんですって。ですので、生卵が苦手な方にもおすすめ。
さてさて、卵かけご飯にして食べてみました。あっさりとクセのないナチュラルなお味。卵そのものの味は語弊を恐れず言うと、ほんのり甘くておいしい天然水を飲んだ時のように喉越しがよく、さらっとしています(喉越しの良さに驚き)。飲んだ後にサラサラッと食べたらおいしいだろうなあ。
WABISUKEさんおすすめ たまごかご飯の食べ方
岡さん:個人的に先に醤油をご飯にかけると醤油の香りが広がっておいしく召し上がれると思います。また、卵かけご飯用の出汁醤油は、出汁が効きすぎるため、卵の味が負けてしまうことが多いので、うちの卵ではあまりおすすめしていません。
⇒たしかに先にご飯に醤油をたらし、卵とご飯をよ~く混ぜるとおいしさ倍増。
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WABISUKE
京都府宇治市宇治金井戸10-4
TEL0774-24-2507
ご購入はHPから
蓮ケ峯農場「純国産鶏もみじ平飼いたまご」@綾部市
綾部市の市街地から車で約30分。上林地区の山の麓に立つ「蓮ヶ峯農場」。こちらは京都市内から移住した峰地さんが自分たちで家を建て、山から水を引き、田畑を耕し、山奥に小さな鶏小屋を建て100羽ほどの鶏を飼ったのがはじまり。現在はその思いを引き継いだ息子の幹介さんが鶏たちの習性や本能を尊重し、大切に育てています。
育てている鶏種は「純国産鶏もみじ」。外国鶏より産卵率が低いですが「日本で幾世代にもわたって交配を繰り返して作った鶏なので日本人の嗜好に合っていますし、なにより卵がおいしいんです」と峰地さん。通常、平飼いというと1㎡に10羽以上飼うのも普通ですが、こちらはなんと2~3羽。ゆったりとした環境でオスとメスが一緒に暮らしています。ゆえに土が常に渇き、微生物的なバランスが整っているので鶏舎は驚くほど臭いがないのだとか。「鶏舎の中でお弁当を食べても大丈夫なぐらい無臭ですよ」と峰地さん。
味の決め手となるエサは独自でブレンド。メインのタンパク質は通常、アラなどがメインの魚粉を使うことが多いのですが、こちらでは上質のカツオ節を使用。そのため「魚の臭みがないんです」と峰地さん。それにきな粉や胡麻の搾りかす、海藻、トウモロコシ、米などをブレンド。いろいろな風味や味、栄養が交わって、このエサはおいしいだろうな~。それに山の湧水を流しっぱなしにしいるので、鶏たちは常に冷たくて新鮮なものを飲んでいるんですって。
卵かけご飯にして食べた感想は、黄味が濃すぎることなく白身と黄味の味のバランスがとてもいい!白身が美味しいのにも驚き。 毎日食べても飽きない味ですね。目玉焼きにもしてみたのですが、焼いても味のバランスがとてもよかったです。
蓮ヶ峯農場さんおすすめ たまごかけご飯の食べ方
峰地さん:うちの鶏にはエサにカツオ節を加えているので大豆で作った醤油よりも魚醤が合うと思います。おすすめは山口県で作っている「瀬戸内コラトゥーラ」というカタクチイワシを使った魚醤。これは魚醤の中でも臭みがなくトップクラスに美味しいです。魚醤が無い場合はカツオ節をかけ甘さ控えめの醤油をたらすのもおすすめですよ。
⇒魚醤が手に入らならかったので、卵にカツオ節をしっかりまぜて食べたら、これが美味。おすすめです。
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蓮ヶ峯農場
京都府綾部市八津合町別当2-1
TEL 0773-21-5668
ご購入はHPから
戸川養鶏場「京都美山平飼いたまご 美卵」@南丹市
“かやぶきの里”として知られる南丹市美山町。昔ながらの日本の原風景が残る山あいの集落に「戸川養鶏場」があります。養鶏場を営むのは元、ベンチャー支援を中心とした経営コンサルタント会社で働いていた戸川倫成さん。クライアントの平飼い養鶏をサポートするうち、その将来性や成長性、社会的使命を感じ2016年、自ら養鶏農家に転身してしまったというユニークな経歴の持ち主です。
こちらで育てているのは褐色の羽が美しい純国産鶏の「ゴトウ赤玉鶏 もみじ」。強健で抗病性に優れ、卵内容が優れている鶏です。より自然に近い環境で過ごしてほしいと、1㎡あたり3羽以下で育てているのでストレスフリー。鶏舎は風通しもよく美山の新鮮な空気に包まれています。
エサは遺伝子組み換えではないトウモロコシを中心にした穀物に、地元美山産米の米クズや米ヌカ、大豆粕、酒粕、醤油粕などを季節にあわせて与えています。もちろん抗生物質などは一切使用していません。卵を割るとその大きさにびっくり。白身も強く、黄味もしっかりしています。戸川さんによると卵の成分の約8割は水分。ですから鶏が飲む水は大切。戸川養鶏場では京都で唯一「水の郷百選」に選ばれている南丹市美山町の由良川や芦生原生林を源泉とする天然地下水をくみ上げ与えています。
とにかく黄身がねっとりと濃厚なのが特徴。それに驚くほど白身がプリッとしています。どっしりとした味なので、卵かけご飯を食べたー!! という充実感が味わえます。
戸川養鶏場さんおすすめ たまごかけご飯の食べ方
戸川さん:うちの卵は臭みがないので、濃い醤油油よりご飯と卵のおいしさを引き立たせてくれる出汁を効かせ、あっさりとした出汁醤油がよく合います。おすすめは京都市にある出汁専門店うね乃さんの「だし屋のたまごかけご飯のたれ」。ぜひ試してみてください。
⇒地産地消とはまさにこのこと。京都のものを食べてできた卵に京都のお出汁が良く合います。
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戸川養鶏場
京都府南丹市美山町北大島43番地の2
購入はこちらから 食べチョク
※マップでは「中野養鶏所」となっていますが、美卵さんはこの「中野養鶏所」を引き継いで経営されています。