脈々と受け継がれてきた職人技が生み出す伝統工芸品は、他にはない輝きを放つ憧れの品。ですが、いざ手に入れるとなると、ちょっとハードルが高いものですよね。
今回はそんな方にぴったりな、伝統の技を生かしつつ、日常にすっと馴染むスタイリッシュなアイテムをご紹介します。職人の手で丁寧に作られた小物たちが、暮らしをちょっぴり豊かにしてくれるかも。
手織りならではの風合いが生み出す凛とした美しさ
KUSKAの「リボンバレッタ」(与謝郡与謝野町)
折り紙をテーマにデザインされた立体的なフォルムが、見る角度によって様々な表情を見せる「KUSKA」の「リボンバレッタ」。糸作りから染め・織り・縫製まですベて手作業の手織り生地を使ったヘアアクセサリーです。脈々と受け継がれてきた伝統技術や作り手の思いまでもが一緒に織り込まれているバレッタは、身に付けると背筋がしゃんと伸びるような、凛とした美しさを纏っています。
「KUSKA」を手がけるクスカ株式会社の前身は、絹織物の産地として名高い丹後の地に1936(昭和11)年に創業した織元「楠嘉織物」。約300年前に京都・西陣から丹後に伝わった技法で織られる丹後ちりめんを生産していました。洋服の普及によって生産量が減っていた最中、会社を継ぐことを決意したのは東京で異業種の仕事をしていた3代目。それまで持っていた機械を全て手放し、手作業を重んじたアイテムづくりへと舵を切ります。
そして2010年に「昔の織り技法で今のライフスタイル」がコンセプトのブランド「KUSKA」が誕生しました。生地に空気を含ませながら手織りすることで機械には出せない温かみのある風合いを表現した、ネクタイやストール、スニーカーなどがそろいます。丹後の美しい海を表現した色「丹後ブルー」をはじめ、色柄も種類豊富。どれも優しい質感とシルクならではの光沢が、さりげない品の良さを感じさせてくれるアイテムばかりです。
■■INFORMATION■■
KUSKA TANGO FACTORY SHOP
住所:京都府与謝郡与謝野町岩屋384-1
TEL:0772-42-4045
営業時間:10時〜17時
https://kuska.jp
※「KUSKA&THE TANGO 東京店」が、2020年9月に東京都千代田区にオープン予定
【WEB購入】
KUSKA Online Shop
https://shop.kuska.jp
丁寧に織られたシルク地でワンランク上のコーヒータイムを
織道楽 塩野屋の「絹製珈琲フィルター 円錐」(亀岡市)
江戸時代後期、初代が京都・西陣に店を構えてからおよそ300年、絹織物の織元としてものづくりを続けてきた「織道楽 塩野屋」。2013年に亀岡市に拠点を移してからも変わらず国産の絹糸だけを使用し、受け継がれる職人技を生かして着物や帯、タオルや寝具といった絹製品を生み出してきました。
14代目に当たる当代は大のコーヒー好き。ネルドリップでコーヒーを楽しんでいた時に「コットンではなく、自分たちの織る反物でフィルターを作ってみたらどうだろう」というアイデアが浮かんだそう。それから試行錯誤を繰り返し、より美味しくコーヒーが淹れられる織り組織を考案。完成したのが絹100%の「絹製珈琲フィルター 円錐」です。
フィルターを一度水で濡らして絞ったら、軽く伸ばしながらドリッパーにセット。豆の山にお湯を一滴ずつ落としながらじっくりとドリップします。極細の糸で蜜に織られた布地は細かな豆の粉さえも通さないため、雑味の除かれたクリアな味わいのコーヒーが淹れられます。また、紙のフィルターに比べてゆっくりとドリップするので、余すことなくコーヒー豆の旨味を抽出することができるのだとか。煮沸して保存すれば繰り返し長く使えて、エコなのも嬉しいですね♡ 使い捨てではない道具で丁寧にコーヒーを淹れるひとときは、心をそっと穏やかにしてくれそうです。
■■INFORMATION■■
織道楽 塩野屋
住所:京都府亀岡市曽我部町南条宮田筋16-89 1階
TEL:090-3167-2284
営業時間:10時〜17時
定休日:不定休
http://www.shiono-ya.co.jp
【WEB購入】
織道楽 塩野屋 オンラインショップ
http://www.shiono-ya.co.jp
斬新なアイデアが光るスタイリッシュな竹アイテム
長岡銘竹株式会社の「京銘竹ボトルスタンド」「AROMA × BAMBOO アロマディフューザー”ゆり籠”」
1952(昭和27)年の創業以来、約70年もの間、京都、そして日本の街並みに欠かすことのできない竹垣を専門に作り続けている「長岡銘竹」。竹の特性を知り尽くした竹のプロ集団による確かな目利きや加工技術を生かし、金閣寺や銀閣寺、桂離宮といった名だたる名所の施工を手掛けてきました。「長岡銘竹」の創業は向日市。その後京都市内への移転を経て現在は大山崎町に工房を構えています。粘土質な土壌や寒暖差がある気候が古くより良質な竹を育んできた京都・乙訓地方が、創業の地であり現在の拠点です。
近年、「昔は日本人にとって身近な存在だった竹が、再び生活の中に当たり前にある世の中に」との思いから、現代のニーズに合った竹アイテムを開発。その一つが「京銘竹ボトルスタンド」です。
先端の穴にボトルを挿すことで自立する画期的なスタイルは、食卓に驚きを運んでくれます。スタイリッシュなフォルムは、どんなインテリアにも馴染んでくれそう。火であぶって油を抜き、何日間も天日干しして乾燥させるという京都ならではの技法で作られた京銘竹・白竹をはじめ、胡麻竹や図面竹など表情の異なる素材から選ぶことができます。
また、「AROMA × BAMBOO アロマディフューザー”ゆり籠”」も、竹をモダンにアレンジしたアイテム。熟練の職人技で幅と厚みを抑えながら加工した竹ひごを「四海波」と呼ばれる美しい形に編み上げたアロマディフューザーです。籠の中には竹のカンナくずが入っていて、そこにアロマオイルを落とせば竹の繊維がオイルを吸い上げ、優しい香りをお部屋に広げてくれます。見た目と香りの両方に癒される、上質なリラックスアイテムです。
ご紹介したアイテムは、どちらもオンラインショップから購入可能です。
■■INFORMATION■■
【WEB購入】
長岡銘竹オンラインショップ
https://nagaokameichiku.shop-pro.jp
長岡銘竹株式会社
住所:京都府乙訓郡大山崎町円明寺海道19
TEL:075-925-5826
https://nagaokameichiku.com
※会社での販売はなし
“竹の泡”がゆらり、素材感を愛でるアクセサリー
高野竹工の「泡 abuku」イヤリング・ピアス
竹の名産地である京都・乙訓地方の長岡京市に工房を構える「高野竹工」。幼い頃から竹に慣れ親しんで育った初代の“自然の美を追求する心”を受け継ぎ、竹をはじめとした自然素材を使った製品作りを続けています。
竹を製品の素材として使えるようにするには、長い年月と手間が必要。「高野竹工」では、竹林の整備、竹の伐採、油抜き、そして数年間の乾燥といった工程すべてを職人の手で行います。そして、丹精込めて整えた竹を、指物・漆・蒔絵・轆轤(ろくろ)などの様々な伝統技術を持つ職人らが、茶道具から日用品まで多彩な品々へと加工しているのです。
「日常に職人の技を飾る」をコンセプトに考案されたイヤーアクセサリーシリーズ「kazaru」には、竹の質感を生かしながらシンプルでモダンな雰囲気に仕上げられたアクセサリーがラインナップ。その中の一つ、今回ご紹介する「泡 abuku」は、竹という自然由来の素材とリンクするようモチーフもナチュラルなものをと、連なる水泡を表現したイヤリング&ピアス。違和感なく日常に溶け込んでくれそうな、愛らしいデザインです。丸いパーツの素材は、光沢と皮目の色味が美しい真竹。白っぽい竹の内側と、黄色っぽい外側を使い分け、組み合わせることで遊び心を感じるデザインに仕上がっています。
■■INFORMATION■■
【高野竹工・店舗情報】
直営店 ばんてら
住所:京都府京都市中京区御幸町通錦小路上る船屋町373-3
TEL:075-223-3883
営業時間:11時30分〜18時30分
定休日:無休 ※年末年始を除く
https://www.takano-bamboo.kyoto/bamtera/
※新型コロナウイルスの影響で不定期営業中。営業日時はウェブサイトを要確認
直営店 篁
住所:京都府京都市東山区中之町238-1
TEL:075-531-6881
営業時間:12時〜19時
定休日:火曜
https://www.takano-bamboo.kyoto
※新型コロナウイルスの影響で不定期営業中。営業日時はウェブサイトを要確認
【WEB購入】
高野竹工株式会社 Online Shop
https://www.takano-bamboo.jp/shopping/
【企業情報】
高野竹工株式会社
住所:京都府長岡京市勝竜寺東落辺14-15
TEL:075-955-2868
https://www.takano-bamboo.jp
歴史ファンもびっくり?甲冑の意匠を日用アイテムに
MIYAKEの「名刺入れ」
実際の人間が身に纏っていた衣服さながらの精密さで作り上げられた衣装が目を引く、雛人形や五月人形。「京人形み彌け」は、1969(昭和44)年の創業以来、伝統工芸士の精巧な技で京人形を作り続けてきました。
京人形伝統工芸士は人形そのものや着物だけではなく、人形が身に着ける武具やそのほか小物の制作も手掛けます。なかでも独特な構造を持つのが甲冑。金属や皮革といった素材を板状のパーツにし、それを紐で編み込んで作られます。これは、頑丈な素材を外装に使うことで着る人の身を守りながらも、一つひとつが独立したパーツであることで柔軟性も実現した、大変機能的な造り。その、甲冑の持ち味ともいえる構造を作る技術を生かして誕生したのがMIYAKEの「サムライバッグ」シリーズ。モダンなデザインの中に甲冑の意匠を取り入れたハンドバッグやリュック、クラッチバッグや財布などが揃います。
今回ご紹介する名刺入れもその一つ。「HIDEYOSHI RED」「HIDEYOSHI BLACK ICHIMATSU」など、4種類の色柄がラインナップ。デザインから材料調達、生産加工まで全て京都を中心とした国内で行うオールジャパンにこだわった、牛革製の名刺入れです。
外側には甲冑を彷彿させるプレートと紐の意匠が施され、伝統的なデザインと色が現代のアイテムに巧みに取り入れられた、洗練された逸品に仕上がっています。ほんのりと漂う戦国の情緒と今も息づく職人技を、日用品から感じてみてはいかがでしょうか。
■■INFORMATION■■
京人形み彌け/MIYAKE
住所:京都府宇治市小倉町南堀池103-53
TEL:0774-22-5008
営業時間:10時〜18時
定休日:日曜 ※1月1日〜5月5日は無休
https://www.kyoto-miyake.co.jp
【WEB購入】
Samurai Armor Bag NET SHOP
https://kyoto-miyake.net
煌びやかな極細の糸が耳元を彩る
京山城燦彩糸協議会の「ピアス 京鶴・みやこ花火」
耳元で上品な輝きを放ちながら軽やかに揺れる、金色と銀色のピアス。素材は、京都が誇る絹織物を作る上で欠かすことのできない金銀糸です。極細の糸を使った巧みな刺繍技法で表現される、陰影や凹凸、縁取りといった精緻な意匠に思わず見惚れてしまいます♡ 糸でできたピアスは軽く、着けているのを忘れてしまうような着け心地も魅力。ストレスを感じさせることなく耳元を可憐に彩ってくれます。
このピアスの素材である糸が作られているのは、金銀糸の産地として名高い南山城地方にある城陽市。明治時代に西陣織の材料として金銀糸の生産が盛んになり、今も伝統産業として全国の金銀糸のうちおよそ50〜60%を生産しています。
城陽市の熟練の職人が集まり、その技術を駆使して作り上げた高品質の金銀糸ブランドが「燦彩糸(さんさいし)」。高い強度としなやかさを併せ持ち、最小0.1mm幅という極細さを実現した貴重な糸なのだそうです。気軽に挑戦できるピアスから、糸が放つ気品ある輝きを日々のファッションに取り入れてみてはいかがでしょうか。
京山城燦彩糸協議会 HPから購入が可能です。
■■INFORMATION■■
【WEB購入】
京山城燦彩糸協議会HP
https://sansaishi.kyoto.jp
【協議会情報】
京山城燦彩糸協議会
住所:京都府城陽市富野久保田1-1 城陽商工会議所内
TEL:0774-52-6866
https://sansaishi.kyoto.jp
※商工会議所内での販売はなし