神社や寺院の門前で睨みをきかせる狛犬。日本では平安時代の初めから置かれるようになったといわれ、向かって右側で大きな口を開ける「阿(あ)」像、左側で口を真一文字に結ぶ「呍(うん)」像が、邪気を払うと信じられています。
さて、京都には狛犬ならぬ「狛虎」が祀られている寺院があるのをご存じですか?来年の干支は寅年。2022年の初詣にぜひ行きたい京都の寺院をご紹介します。
本物以上にリアルな造形にも注目!な阿吽の虎
鞍馬寺(京都市左京区)
まずご紹介する寺院が、パワースポットとして多くの人が詣でる鞍馬寺です。源義経が牛若丸といわれた幼少期に過ごした寺院として有名ですよね。奈良時代末期の770年(宝亀元年)の頃、鑑真和上の高弟・鑑禎上人(がんちょうしょうにん)が毘沙門天を祀ったことが起源とされています。毘沙門天の使いが虎というだけあって、山内には2組4頭の虎が鎮座。阿吽の虎と呼ばれ、特に大切にされているそうです。
1組は、仁王門前に鎮座する石造りの阿吽の虎。こちらは、1913年(大正2年)に祀られたことが台座部分に刻まれています。
仁王門の前で睨みをきかせる狛犬。邪気も恐れを為して逃げてしまいそうです。
そしてもう1か所が、ケーブルカーで登った先にある本殿金堂。堂内には、宇宙の大霊、尊天のお働きを象徴する千手観音菩薩、毘沙門天王、護法魔王尊(脇侍、役行者・遮那王尊)が祀られています。
こちらの阿吽の虎は青銅製で、1951年(昭和26年)に鎮座。どんなものでも噛みちぎりそうな鋭い牙や渦を巻いて盛り上がった背中が、虎の強さを見事に表現しています。
呍形の像の造形もリアルで、今にも飛び出してきそうな迫力です。阿吽とは、物事の最初と最後いう意味。宇宙の全てを包含するといわれています。
鞍馬寺の1月最初の寅の日には、毘沙門天が寅の月、寅の日、寅の刻に鞍馬山に出現したことに因み、初寅大祭が開かれます。昔から初寅の日に毘沙門天に参拝すると、無量の大福を授かるといわれてきました。ちなみに、2022年の初寅の日は1月1日です。市内に比べてグッと冷え込むことが多いので、防寒対策を万全にしてお参りください!
■■INFORMATION■■
鞍馬寺
TEL:075-741-2003
住所:京都市左京区鞍馬本町1074
時間:9:00~16:15
拝観料:愛山費300円、ケーブル寄付金大人片道200円、霊宝殿200円
お休み:無休/霊宝殿は月曜(祝日の場合は翌日)と12月12日~2月末日まで休館
アクセス:叡山電車鞍馬駅から仁王門まで徒歩3分、本殿まで30分
小さなお堂には虎がいっぱい!
両足院 毘沙門天堂(京都市東山区)
建仁寺の塔頭寺院である両足院(りょうそくいん)。こちらの鎮守社である毘沙門天堂にも、一対の狛虎が睨みをきかせています。本尊の毘沙門天は、元々鞍馬寺の毘沙門天の胎内仏だったと伝わり、寺伝では織田信長の比叡山延暦寺焼き討ちの際、鞍馬寺の僧侶が茶家の比喜多養清にこの毘沙門天像を託したと伝わっています。後に養清と交流のあった黒田長政がこの像を手に入れ、関ヶ原の戦いでは兜の中にこの毘沙門天像を納めて戦い、勝利したといわれています。毘沙門天像はその後黒田家で代々祀られていましたが、1878年(明治10年)頃、両足院へと寄進。お堂が建てられ、祀られるようになりました。
こちらが阿形の狛虎。雄々しく雄叫びをあげながらこちらに向かってきそうな迫力に満ちています。
呍形の虎も、しっかりと大地を踏みしめ、まるで今にも動き出しそうな威風堂々たる姿が特徴的です。
またこちらの毘沙門天堂には、狛虎だけではなく他の場所にも虎が潜んでいます。たとえば、お堂の前に置かれた香炉。こちらにも、阿形・呍形の虎がフチを握りしめていて、ちょっぴりユーモラス♪ 他にも、虎がこっそり姿を隠している場所があるので、ぜひ探してみてくださいね。
境内には、つい飾りたくなるかわいさも魅力的な虎みくじをはじめ、絵馬も虎にまつわるデザインのものを用意。最近は、アイドルファンが願いを込めて絵馬を奉納することも多いようです。戦前は、衹園の芸妓さんや舞妓さんが「いい旦那様が見つかるように」という願いを成就させていたことから、「衹園の縁結び」と呼ばれていた毘沙門天堂。今でもお参りの際には、偶然、舞妓さんに出会えるかもしれませんよ。
■■INFORMATION■■
両足院 毘沙門天堂
TEL:075-561-3216(両足院)
住所:京都市東山区大和大路通四条下ル4丁目小松町591 建仁寺山内(両足院に隣接)
時間:8:00~17:00
拝観料:境内自由
定休日:なし
アクセス:京阪祇園四条駅から徒歩5分
※参拝に関しては事前に公式HPをご確認ください。
「虎」と「丑」の石像が祀られている理由とは…
法輪寺(京都市西京区)
「虚空蔵法輪寺」「嵯峨の虚空蔵さん」の名で親しまれている法輪寺は、嵐山を一望できる山の中腹に佇む古刹です。713年(和銅6年)に、行基が開創。829年(天長6年)に空海の弟子・道昌が虚空蔵菩薩像を祀り、法輪寺と称しました。京都では十三まいりのお寺として知られており、数え年13歳の男子・女子が知恵と福徳を授かるためにこのお寺にお参りしています。また2月と12月に開かれる針供養法要は、京都の冬を彩る行事としても有名です。
門を抜け、長い階段を上った先に鎮座する法輪寺の虎の石像。筋骨隆々でしなやかな動きを感じられる身体。そして大きな口を開けて天に向かって叫ぶ姿は、風格に満ちあふれています。
一方、呍形の像に目を向けると、なんとこちらは虎ではなく丑(うし)。いったいどうして丑なのでしょうか。仏教では、それぞれの生まれ年の干支によって守り本尊があるといわれています。中国伝来のこの信仰は、千手観音菩薩、虚空蔵菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩、勢至菩薩、大日如来、不動明王、阿弥陀如来の八尊を十二支に割り当て、このうち丑年・寅年に生まれた人は同寺のご本尊でもある虚空蔵菩薩によって護られているそうです。そういったいわれがあって、虎と丑が祀られているのですね。
また境内には、虚空蔵菩薩の使いである羊の像も祀られているほか、電気・電波の守り神として知られる電電宮などもあり、正月には多くの人が参拝に訪れます。
展望台からは渡月橋や嵐山の景色を一望できるのでおすすめ!晴れやかな気持ちでお正月を迎えられそうです!こちらもぜひ足を運んでみてくださいね♪
■■INFORMATION■■
法輪寺
TEL:075-862-0013
住所:京都市西京区嵐山虚空蔵山町
拝観料:境内自由
時間:9:00~17:00
定休日:無休
アクセス:阪急嵐山駅から徒歩約5分