祇園祭・時代祭に並び、京都三大祭りのひとつである「葵祭」。今年、4年ぶりに開催されることが決まり、平安装束を身にまとった雅やかな行列を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか? 今回は初夏の京都で行われる祭礼「葵祭」についてご紹介します。
葵祭とは?
葵祭は賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ/下鴨神社)と賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ/上賀茂神社)の例祭で、古くは「賀茂祭(かもさい)」または「北の祭」とも呼ばれ、その起源は京都に都ができる以前の6世紀まで遡るといわれています。
欽明天皇(在位:539〜571年)の時代、風水害に見舞われ作物が実らず、国民が困窮する事態が相次ぎました。その原因について天皇が占いをさせたところ、五穀豊穣をつかさどる賀茂の大神の祟りであることが判明。その祟りを鎮めるため、賀茂の大神の崇敬者であった卜部伊吉若日子(うらべのいきわかひこ)を勅使として、4月の吉日に馬に鈴を付けて走らせ、豊作を祈願したのが始まりとされています。
その後、弘仁10(819)年には国家的行事となり、一時中断することはありましたが、現代までその伝統は守られてきました。
葵祭に関連する神事や儀式は5月1日から始まり、5月15日にはこの祭りのハイライトにある「路頭の儀」が執り行われます。
当日は、葵と桂を飾った総勢約500人・馬36頭・牛4頭・牛車2輌・腰輿(およよ)1基からなる全長約800メートルの行列が午前10時30分に京都御所を出発し、丸太町通・河原町通を通り11時40分頃に賀茂御祖神社(下鴨神社)に到着。その後、加茂街道を通り午後3時30分頃に賀茂別雷神社(上賀茂神社)に到着します。
都大路を平安時代の優雅な王朝装束を身にまとった行列が練り歩く姿は、王朝絵巻さながらに豪華絢爛で、思わず見惚れてしまいます。
「斎王代」ってどんな人?
行列のなかでも一際目を引くのが祭りのヒロインともいえる「斎王代(さいおうだい)」。「斎王」とは、かつて伊勢神宮や賀茂神社に奉仕した未婚の内親王(天皇の娘)のことをいい、平安初期の嵯峨天皇から鎌倉初期の後鳥羽天皇の時代にかけては、その斎王が葵祭に出御されていました。
現代は、京都市出身の未婚の女性から選ばれることから、斎王の“代理”ということで「斎王代」と呼ばれています。
この斎王代が身にまとっている十二単衣の正式名称は、「五衣唐衣裳(いつつぎぬからぎぬも)」といいます。正絹で幾重にも折り重なる色合いがとても美しい十二単衣ですが、着付けは前役・後役の2名で行い、衣裳全部の重量は20kgにもなるのだとか! 凛とした姿で祭礼を行う様子からは容易に想像できないほど、斎王代には体力が必要なことにびっくりしますね。
実は行列の主役は「近衛使」!
ついつい斎王代に注目しがちですが、実は行列の主役は「近衛使代(このえづかいだい)」なんです。近衛使代とは天皇の使いで、行列中の最高位者。四位近衛中将がこれを勤めるので、近衛使(このえづかい)ともいわれます。現在、勅使は路頭の儀には加わらず、近衛使代が勤め、当時の様式どおり飾太刀や騎乗する馬も美々しい飾馬となっています。
行列に参加しているのはどんな人?
総勢約500人の行列の行列参列者たち。近衛使代・斎王代以外はどのように選ばれた人たちなのか気になりませんか? 実は関係者から推薦された人や、アルバイトで募集された人たちなんです。
アルバイトの募集対象は、京都大学・立命館大学・京都産業大学・京都先端科学大学を中心とした男子学生たち。日給は7,500円で、昼食のお弁当付きなのだとか。
大学を通じて募集され、応募者は当日に説明を受けて本番に臨むのだそうです。平安装束を着て葵祭の行列参列者に加われるなんて、とても羨ましいですね。
おすすめの無料観覧スポット
世界最古の長編物語といわれている『源氏物語』の中でも描かれている葵祭。光源氏の正妻・葵の上と、恋人の六条御息所が場所の取り合いをしてまでも“いい場所”から観覧したかったように、私たちもぜひ、いい場所から見たいですよね。もちろん、有料観覧席を確保するのが一番なのですが、予約ができなかった方のために、編集部おすすめの無料観覧スポットをご紹介します。
おすすめ1 京都御所・堺町御門を入って左に進んだスポット。正面に建礼門を望む場所に陣取ると、行列を正面から見ることができますよ。人は多いですが、御苑を進む行列を撮るならここがベストポジション。「これぞ葵祭!」という写真を撮ることができます。
おすすめ2 上賀茂神社近くの加茂街道沿い。街中からちょっと離れているので比較的人が少なめです。間近に通る行列をゆっくりと落ち着いて観覧するなら、ここがイチオシです!
どちらのスポットも、いい場所を確保するなら1~2時間前に訪れるのがベター。場所取りをする際には日焼け・熱中症対策を万全にしてくださいね。
今年4年振りに開催される葵祭。ぜひ、この雅やかな祭礼を観覧しに訪れてくださいね。
■■INFORMATION■■
葵祭
日時:2023年5月15日(雨天順延・当日早朝判断)
■■記事監修■■
葵祭行列保存会
TEL:075-254-7650
京都市観光協会
TEL:075-213-1717