本格的な梅雨シーズンが到来する6月。この時期、突然の豪雨や水害のニュースに不安を感じたことはありませんか? 「災害に備えるためにはどうしたらいいんだろう?」と考えていたところ、京都府福知山市に災害について体験しながら学べる施設があると聞き、早速行ってきました!
「福知山市防災センター」ってどんなところ?
今回お邪魔した「福知山市防災センター」は、消防・市民防災研修・災害対策の3つの機能を備えた、福知山市消防防災センターの2階にある体験型の防災施設です。こちらでは過去の災害を振り返りながら災害の恐ろしさを学び、防災対策を擬似体験することで“危機意識”や“命を守る方法”を学ぶことができます。
防災シアターで災害の恐ろしさを学ぶ
初めに案内していただいたのは「防災シアター」です。まずはここで風水害や地震、火災などの災害について映像で学びます。
シアター内では防災センターのオリジナルキャラクター・ミゼンちゃん、シュワット君、シュワ子ちゃんが過去に福知山市で起こった災害をモデルケースに、避難方法や注意事項を説明しながら、災害現場でどのように行動すればいいのかなどを教えてくれます。
臨場感ある音と映像に加え、危険な災害シーンではシートに組み込まれた振動装置がブルブルと揺れるので、まるで目の前に流れる映像の災害を体感しているような感覚になりました。
映像をみながら感じる災害の恐ろしさに、避難するべきタイミングに迷わず行動する大切さを改めて感じました。
防災グッズを確認しよう
災害について学んだ後は、「防災グッズ」エリアへ移動しました。
防災グッズには様々な物がありますが、避難時には両手が使えるリュックサックにまとめて入れておくことがポイント。リュックには一人3日分くらいの食糧品や水・日用品を用意するのがよいといわれていますが、これについては無理をせず自分の体力と入れ物とのバランスを考えて用意するのが大切だそうです。
また、意外と準備されていないのが「明かり」と「靴」なのだとか。緊急時、暗闇の中ではパニックになりやすいことや、瓦礫の上を歩かなければいけない場合があるので、防災グッズに必ず加えておいた方がいいそうです。
そしてなにより大事なのが“いつでも持ち出せる場所”に置いておくこと。防災リュックなどを準備された時は玄関などに置いていることが多いそうですが、だんだんと押し入れやクローゼットに追いやられていく場合も…。いざという時のために今一度、置き場所を見直して備えたいですね。
水圧体験車で水没時の車両ドア開放を体験
車の運転中に大雨やゲリラ豪雨に遭遇した場合、気付かず水が溜まりやすい高架下などに車ごと突っ込み水没してしまうケースがあります。もし水没してしまったら、どれくらいの水圧でドアが開かなくなってしまうのでしょうか? 水圧体験車で体験してみたところ、タイヤの半分くらいまでなら、ドアは重いですが女性の力でも開けることができました。
しかし車体の半分ぐらいまで水没してしまうと、ドアを開けることができません。この場合、車内外の水位が同じ位になることで、水圧が均一になりドアを開くことができるそうです。
…ですが、その間に車体はプカプカと水に浮かんでいます。エンジンは約3秒、その他の電気系統も20秒くらいで停止してしまうため、窓が閉まっていた場合パワーウィンドウのコントロールも効かなくなり、車内に水が入らず水圧を均等にすることができないのでドアを開けられないケースがあります。
また、車内に水を入れドアを開けることができたとしても、パニック状態に陥り脱出に時間がかかってしまうので、水没時には迷わず脱出することが大切です!
このような予期せぬ水没事故に備え、車内には「レスキューハンマー」を用意しておくとよいそうです。
これがあればサイドガラスは簡単に割ることができます。しかし、容易に貫通できない合わせガラスでできているフロントガラスはレスキューハンマーでも割れないので、注意してくださいね。
レスキューハンマーはどれくらいの強さで叩けばいいのか? こちらも体験できるので試してみたところ、結構強めに叩く必要がありました。
レスキューハンマーがない場合、シートからヘッドレスト(車のシート上部についている枕のような部分)を抜き代用することができます。ヘッドレストの支柱をドアと窓ガラスの間に差し込み、てこの原理でヘッドレストを手前に強く引くとサイドガラスを割ることができるそうですよ。
煙体験で避難の仕方を学ぶ
次に体験したのは煙で前が見えない時の避難方法です。
部屋に入ると辺りは暗く煙が満ちていました。手探りで避難できる道を探しながら進むのですが、だんだん前後左右が分からなくなり、暗闇と方角を見失ったことでじわじわと恐怖がわいてきます。
なんとか出口に辿り着いたのですが、実際の火災現場では間違いなくパニックを起こしてしまいそうだと思い、とても怖くなりました。
火災現場では「いかに煙を避けて避難できるか」が大切なのだそうです。炎より早く広がる煙は、1秒間で横に約1メートル、縦に3~5メートルの速さで移動するといわれています。また、建物火災では一酸化炭素中毒などの危険があるほか、室内温度が1,100~1,200度にもなるため、高温の煙を吸ってしまうと15~20分ほどで気道熱傷により呼吸ができなくなることがあります。
避難の時このような危険から身を守る方法として、ハンカチや服の袖などを口に当て、なるべく低い姿勢で煙を避けながら避難しましょう。その際、携帯のライトなどで周辺を照らし、片手で壁を伝いながら進んでください。この時、両手で壁を伝うと前後左右がわかりにくくなるので注意が必要です。
消火器を使って消火体験
ここではキッチンで発生した火災を消火器で消す体験ができます。
火事を発見したらまず大きな声で火事を周りの人に知らせることが大切です。そうすることで聞きつけた人が通報してくれたり、助けにきてくれるかもしれないからです。そしてなによりも自分のところで起きた火事でお隣の家を巻き込む可能性を減らすことができます。
鍋から火が燃え移ったら「火事だ!」と大声で叫びます。隣人に届く声の大きさは約90デシベルといわれており、これは騒々しい工場の中にいるくらいの音の大きさです。こちらでは声の大きさを感知する「音量レベルメーター」が付いているのですが、今回2人で気合を入れて叫んだのに、声は届きませんでした。
周辺に火事を知らせたら、次は消火器を使っての消火活動です。まずは安全ピンを引き抜き、ホースを外して先端をしっかり握り火元に向けます。狙いを定めたらレバーを強く握り消火剤を噴射して消火活動を行います。もし、火が上手く消えず天井まで上ってしまった場合、消火器では消えないのでその場から逃げて119番に通報してください!!
その他には、緊急時の119番通報をシミュレーションできる「119番通報体験」や、近くで人が倒れていた場合の処置法を学ぶ「救急救護対策」、福知山市の危険性を地図で確認しながら実際の被災体験談を聞くことができる「語り部映像」、地震の事前予防策・対処方法を学習する「地震対策」などがあります。
併設する消防署を見学
ここからは一般コースではなく、小学生の見学コースで見ることができる消防署エリアに移動しました。
まず、入れていただいたのは消防士さんが出動時に準備をするロッカールーム。作戦室と繋がるモニターや指令台、車庫に続く出動口があり、準備が出来次第すぐに車両に乗り込むことができるようになっています。
消防士さんの服装は、消防隊員が着る青色の「活動服」、救助隊員が着るオレンジ色の「救助服」、救急隊員が着るグレーの「救急服」、また、救急現場に出動する時に着る「感染防止衣」、火災現場に出動する時に着る「防火服」など、その日の勤務によって変わるそうです
ちなみに防火服の重量は、上下で10キロ、ボンベ(呼吸器)10キロの計20キロ!!
これを45秒以内に着装すると聞いて特別にその様子を見せていただきました。
防火服は着装の際に靴とズボンを一気に履けるようして置いておくなど、時間を短縮するための工夫がされており、着装の度に「右足ヨシ」「左足ヨシ」と声をかけながら常に安全確認を怠りません。あんなに重そうな服なのにあっという間に着替えが終わりびっくりしてしまいました!
続いて車庫に移動すると、高規格救急自動車や水槽付消防ポンプ自動車などがずらりと並んでいて、どの車両もピカピカに磨かれています。
また、レスキュー車には、災害などで破損した車を破壊して、中の人を救助するために使うスプレッターなどが装備されており、山岳・水難・放射能・化学物質に対応できる超優れものの道具が400アイテムも入っていました。
この日は火災が起きているビルの3階から逃げ遅れた要救助者を救助する訓練が行われていたので、こちらも特別に見学させていただきました。
消防隊員2名が3連梯子を使い救出に向かうのですが、要救助者役の「早く助けてくれ!熱い!出れへんねん!! 」などと大声で助けを求める様子は、非常に緊迫感があり、見ていて胸がザワザワするような不安を感じました。
消防隊員が「怪我ない? なるべく低い姿勢になって待ってて」と声をかけながら、要救助者役を梯子にのせ、落ちないように後ろから支えるようにして降りてきます。
実際の火災現場では3階くらいの高さなら、火災の恐怖で飛び降りて怪我をしてしまう人や、いざ梯子がきても怖くて乗れない人がいるそうで、救助をする時は要救助者を安心させ、安全に助け出すための方法を選んでいるそうです。
訓練後は毎回フィードバックをして、救出の仕方や車の停める位置にいたるまで、より安全で素早い救助に繋がるよう改善点を探していくそうです。
このような消防士さんの仕事の取り組みを拝見し、災害時には自分を過信せず避難のタイミングを見極め、早めに行動することが必要だなと改めて感じました。
災害時に役立つアイデアや工夫が詰まった防災公園
最後に見学させていただいたのは防災機能を備えた「防災広場」です。
広場内には下水管に繋がった災害用のマンホールトイレが3箇所備わっており、水や電気が止まった際でも雨水などで流すことができます。使用する時はここにテントを貼って個室のようにして使うことができるそうです。
また、釜戸として使えるスツールやベンチのほか、水害時に土嚢として使える砂場なども備えられています。園内を散策して災害時に役立つアイデアや工夫を探すのも楽しいかもしれませんね。こちらの公園は一般開放されているので自由に中に入ることができますよ。
体験を通じて知る防災知識と行動力の大切さ
「福知山市防災センター」はいかがでしたか? 今回の見学を通して改めて災害の恐ろしさを学び、体験することで命を守るための知識と行動力を身につける必要があると感じました。
見学は予約制になっているので、希望する方は福知山消防署予防課までお問合せくださいね。見学時間は1時間くらいで「この災害について知りたい!」などがあれば、申込時に相談するとコース内容をアレンジしていただける場合もあるそうです。
風水害や地震、火災はいつ起こるか予想ができません。この機会に改めて防災について考えてみませんか?
■■INFORMATION■■
福知山市防災センター
申し込み・問い合わせ:福知山消防署予防課まで(福知山市消防防災センター1階)
住所:福知山市東羽合町46番地の1 福知山市消防防災センター
TEL:0773-23-5119
開館時間:9:00〜17:00(防災研修室は21:00まで)
入館料:無料
休館日:毎週火曜日(火曜日が祝日の場合はその翌日)
アクセス:福知山駅南口より徒歩10分
駐車場:あり
HP:https://www.city.fukuchiyama.lg.jp/site/syoubou/16969.html
■■記事協力■■
福知山消防署予防課
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