明智光秀が城と城下町を築いた京都府福知山市。江戸時代は街道が交わる要衝として、明治以降は大阪や舞鶴を結ぶ「鉄道のまち」として栄えてきました。そんな福知山市に2023年8月26日(土)、福知山の鉄道の歴史を楽しく学べるスポット「福知山鉄道館フクレル」がオープン。訪れてみたら鉄道ファンだけでなく、小さな子ども連れでも安心して楽しめる施設でした!
目次
市民の約10人に1人が鉄道の仕事に携わっていた?!
「鉄道のまち福知山」の歴史が学べる施設
隠れキャラを探せ! ジオラマ模型
親子が安心して遊べる楽しい施設
館を飛び出して「鉄道のまち福知山」をめぐろう
市民の約10人に1人が鉄道の仕事に携わっていた?!
「福知山鉄道館フクレル(以下、フクレル)」があるのは、京都府福知山市にある福知山城公園の中。建物の玄関に立つとお城がよく見える絶景スポットに立っています。
福知山と鉄道の関係について少しだけご説明しましょう。福知山は、古くより由良川水運や街道が交差する “交通の要衝” として栄えた町。さらに明治時代、福知山に鉄道が敷かれると京都・大阪・豊岡・宮津・舞鶴への結節点となり、ますます発展していきました。(写真は明治40年頃の福知山駅)
加えて1950(昭和25)年、全国で27か所にしか置かれなかった「鉄道管理局」が設置されると、町には鉄道病院や宿舎など関係施設が次々と建設され、旧国鉄最盛期の昭和40年代には市民の約10人に1人が鉄道の仕事に携わっていたのだとか。こうして鉄道は福知山の経済を支える重要な存在となったのです。(写真は昭和37年頃の駅舎と駅前の様子)
そんな「鉄道のまち」としての歴史を伝える施設として、1998(平成10)年、かつて福知山を走っていたSLや旧国鉄時代に使用されていた品々を展示する「福知山鉄道館ポッポランド」が開館。多くの人に愛されてきましたが、建物の老朽化により残念ながら2018(平成30)年に休館(現在は写真の旧2号館「フクレル別館」のみ見学可)。しかし再開を求める声が多くあがったこと、福知山市ゆかりの方から2億円もの寄付があったことを追い風に、新しい鉄道館の建設が決定! それが、「フクレル」なのです。
「鉄道のまち福知山」の歴史が学べる施設
それでは早速、フクレルの館内に入ってみましょう~! 入口で入場券を買って昔の改札を思わせる懐かしいゲートをくぐって中へ。建物内は大きく2つのエリアに分かれていて、「鉄道のまち」福知山の歴史が学べる「歴史展示エリア」からスタートです。
入るとすぐに出迎えてくれるのが1949~73(昭和24~47)年に福知山線・山陰本線を走った旅客用 蒸気機関車C5793の第3動輪。迫力がありますね~! C5793というのは、93番目に作られた蒸気機関車C57という意味なんですって。C57はスマートな姿をしていることから「貴婦人」の名で愛されている蒸気機関車です。
貴婦人については、こちらもご覧ください ↓ ↓ ↓
廃線跡を行く―明治時代に9年間だけ走ったレトロな大仏鉄道を巡る旅
この動輪、触ることも可能なんですよ。穴から顔を出して記念写真を撮るのも楽しそう!
その他、このエリアでは「鉄道のまち」としての変遷や福知山を走っていた蒸気機関車の紹介パネル、旧国鉄時代の駅員さんが使っていた懐中時計や合図灯など貴重な品々を展示しています。
中でも興味深かったのは、写真手前に写っているレール。これは英国ダーリントン社製のレール(1870年製双頭レール)なのですが、なんと明治時代に新橋 ― 横浜間もしくは大阪 ― 神戸間で使われていたと考えられるのだとか。レールとしての役目を終えた後、綾部駅の1番ホーム屋根の支柱として使われていたのを1999 (平成11)年の綾部駅改修工事の際に発見されたんですって。これを見つけた方は、さぞびっくりされたでしょうね。
隠れキャラを探せ! ジオラマ模型
こちらは1954(昭和29)年に建てられた旧・福知山駅とその頃の風景(写真奥)、2005(平成17)年に建て替えられた新福知山駅とその周辺の様子(写真手前)のジオラマです。
旧駅舎のエリアには転車台や扇形車庫もありますよ。福知山駅では蒸気機関車の方向転換や扇形車庫への入出庫を行うために1936~72(昭和11~47)年頃まで転車台が使われていました。
そんな歴史も感じつつ、注目してほしいのがジオラマ内の登場人物。よーく見ると、一般の人々に交じって鬼や源頼光ら四天王の方々、かつて福知山市動物園で大人気となったウリ坊とニホンザルのみわちゃん、それにあの有名な将棋の対局も行われているんです! ぜひ、見つけてみてくださいね。
親子が安心して遊べる楽しい施設
ジオラマを過ぎると「交流体験エリア」です。「このエリアは、これからの福知山を担う世代にも来てほしいと思って作りました」と森田成章館長。
写真は靴を脱ぎ、プラレールで自由に遊べるキッズスペース。雨の日や暑い日、寒い日でも安心してお出かけできる場所があるのは、小さい子どもを持つご家庭にも嬉しいですよね。しかも館内の入場無料エリアには、個室の授乳室を備えたベビールームまで完備されていて、子連れファミリーにとって優しい施設となっています。
こちらは壁一面に広がる画面をタッチして線路や街を作ったり、電車を完成させるインタラクティブウォールというコンテンツ。
ところで、今回のオープンで話題になってる2つのゲームがあるのですが、その1つ目が、この「運転シミュレーター」(300円)。
山陰本線の石原駅から福知山駅間の車窓イメージ風景をCGで作成。電車の運転士になって福知山周辺を運転するというゲームです。
CGでは由良川を渡ったり、福知山駅に近づくにつれて福知山城が見えたり、福知山ならではのキャラクターが現れたりと、ローカルネタが盛り込まれていて、とっても楽しい!
もう1つは、福知山公立大学 情報学部の倉本ゼミが監修した「なりきり!機関助士」。蒸気機関車の機関助士になりきり、スコップで火室に石炭を投げるというもの。ただ炭を投げ入れるのではなく、ゲーム方式になっていて、火室の温度や汽車のスピードに応じて投げ分けをするなど、高度なテクニックが要求されます。私も体験してみたのですが、かなりの運動量で、蒸気機関車の機関士さんの仕事がいかに大変だったのか実感できました!
また、毎週土・日曜日は福知山 SL 保存会(旧国鉄OBなど)による「鉄道語り部」が来場。展示の解説などをしてくださるので、ぜひ、気になったことを質問してみてくださいね。(状況により、予定が変更になることがあります)
さらに入場無料エリアにあるミュージアムショップでは、フクレルのオリジナルグッズを販売。その他にも鉄道関連グッズや福知山市のお土産物などもあるので、ショッピングも楽しんでくださいね。
館を飛び出して「鉄道のまち福知山」をめぐろう
さて、フクレルを出たら、「鉄道のまち福知山」を訪ねるミニトリップに出かけるのはいかがでしょう。
フクレルから自転車で回れるぐらいのエリアに蒸気機関車を展示したSLスポット(MAP)や、鉄道のまちを感じるスポットが点在しているのでご案内しましょう。
※レンタサイクルはJR福知山駅北口の観光案内所にあります。
SLスポット
1 福知山駅南口公園 福知山駅南口を出るとすぐに出迎えてくれるるのが、1944~56(昭和19~31)年まで篠山線を走っていた蒸気機関車C1140と転車台です。転車台は現役時代、ここから約100m西にありましたが、用途を終えた後、ここに移設されました。
公園内にある東屋の柱は、旧福知山駅舎で使用されていたレールを再利用したもの。こうやって古いレールはホームの上家(屋根)などの建材として再利用されていたんですね。
2 福知山西駅公園
北丹鉄道の西駅跡地に作られた公園には、北丹鉄道2号機のレプリカが展示されています。北丹鉄道は1923~71年(大正12~昭和46)年まで福知山駅―河守駅間を運行してた鉄道。
この北丹鉄道2号機(レプリカ)は1923(大正12)年に製造され、1956(昭和31)年に廃車となるまで住民の移動手段としてだけでなく、元伊勢神宮参拝客の輸送、由良川河川敷から採取される砂利や河守鉱山から産出される鉱石の輸送等のために走り続けました(写真は由良川を渡る昭和37年の北丹鉄道)。
3 福知山鉄道館フクレル別館(旧ポッポランド2号館)
1970(昭和45)に用途廃止となるまで約9年間、舞鶴線・小浜線で活躍した蒸気機関車C5856を静態展示しています。入場無料。詳細は文末を参照ください。
鉄道のまちを感じるスポット
1 SL壁面
音無瀬橋周辺の城下町通りに描かれた蒸気機関車をモチーフとしたカラフルな壁画。地元の小学生が描いた絵も飾られていますよ。
2 アオイ通り商店街
御霊神社近くのアオイ通り商店街の道路は、「鉄道のまち」らしく線路を模したカラー舗装がさています。
いかがでしたでしょうか。オープンしたばかりの「福知山鉄道館フクレル」と「鉄道のまち」福知山の歴史を感じに、ぜひ訪れてみてくださいね。
■■information■■
福知山鉄道館 フクレル
京都府福知山市字岡ノ32-20
TEL:0773-48-9226
開館時間:9:00〜17:00(最終入場は~16:30)
休館日:火曜日(祝日の場合は開館。翌日休館)、年末年始
入館料(当日に限り再入場可):500円、小・中学生250円、未就学児 無料
福知山鉄道館フクレル別館(旧ポッポランド2号館)
京都府福知山市菱屋7
開館時間:4~10月9:00~17:00、11~3月10:00~16:30
休館日:火曜日、年末年始(その他臨時休館をする場合があり)
入館料:無料