香を薫らせ、十二単や直衣(のうし)に身を包んだ雅やかな平安貴族たちですが、普段はどんな遊びをしていたのでしょう。意外にも今、私たちが知っている遊びがあったり、似たようなスポーツがあったみたいですよ。今回は、そんな平安貴族たちの遊びについて、ご紹介します。
馬に乗って戦う姿がカッコいい
打毬(だきゅう)
大河ドラマにも出てきた「打毬」とは、馬に乗り、白・赤2組(各4~10騎)で対戦する団体戦競技で、地面に置いた毬(たま)を、スティック(打毬杖=だきゅうづえ)を使って味方の組のゴール(毬門)に入れるというものです。
どことなく馬術競技の「ポロ」に似ているのは、共にペルシャが起源といわれているから。奈良・平安時代の頃、端午の節会の際に行われるようになりました。鎌倉時代に衰退しますが、江戸時代になると推奨され、新しい競技方法が編み出されるようになったのだとか。宮内庁の主馬班では現在も江戸時代(中期頃)最盛期における様式の打毬が保存されているそうですよ。
優雅なのにやってみると難しい
蹴鞠(けまり)
8人または6人が輪になって鹿皮製の鞠を蹴り合う遊びです。勝敗はありませんが、ラリーが続くことが重要で、さらに「右足の親指の付け根あたりで蹴る」「膝を曲げずに地面に近いところで蹴る」「3回以内に蹴り返す」など、様々な決まり事があります。
特に大切なのは受け渡しの時の「アリ」「ヤア」「オウ」という掛け声。雅びな掛け声をかけながら、ポン、ポン、ポーンと三拍子で蹴る姿はとても優雅ですが、実際にやってみると結構、難しいのだそうですよ。
京都市の白峯神宮をはじめ、いくつかの神事の神事や行事でも見ることができるので、ぜひチェックしてみてくださいね。
白峯神宮の奉納蹴鞠
4月14日10:30 春季例大祭 淳仁天皇祭 ※蹴鞠体験もできます
7月 7日13:30 精大明神例祭「七夕祭」/
16:00小町をどり奉納奉告祭
白峯神宮HP
謎に満ちた平安姫君たちの遊び
偏つぎ(へんつぎ)
ドラマの中でも赤染衛門主催のサロンで姫君たちが行っていた「偏つぎ」。実は「偏つぎ」はどんな遊びだったか詳しくは分かっていないのだそう。
おそらく、漢字の旁(つくり)を示してこれに種々の偏を付けた漢字を見つける——例えば「寺」という旁が出されたら、「イ」偏を当てて「侍」という字を作ったり、その逆で偏を示して多種多様な旁を見つけて遊んだのではないか等、さまざまな説があります。
特に女性や子供が知識を競うために遊んだともいわれ、『源氏物語』の葵上の巻では光源氏とまだ幼い紫の上が碁を打ったり、偏つぎをして遊ぶ場面が登場します。
(撮影:風俗博物館)
後には御嫁入り道具にもなった
貝合わせ
平安時代における「貝合わせ」とは同じ種類の貝殻の形や美しさなどの優劣を競う遊びでした。
一方で、ハマグリの異なる個体では蓋がピッタリ合わないという特性を生かした「貝覆(おお)い」という遊びがありました。後にそれが混同されるようになり、貝覆いを「貝合わせ」と呼ぶようになったといわれています。
遊び方は、貝殻の左右を地貝と出貝とに分け、地貝を伏せて並べます。貝桶から貝を1枚取り出したら、それに合いそうな地貝を選び取り、多く組み合わせた人の勝ち。
後に貝の内側に絵を描いたり,貝桶に蒔絵などがほどこされるようになり、貝桶一対は上流階級の婚礼調度の一つとなり、お雛様にも飾られるようになりました。
紫式部も清少納言も遊んだ!?
囲碁(いご)
囲碁の歴史はとても古く、奈良時代に唐から輸入されたものといわれています。平安貴族たちも好んだ遊びで『源氏物語』にも度々登場しますが、有名なのは空蝉(うつせみ)の巻での対局シーン。
空蝉とその義娘・軒端荻(のきばのおぎ)が囲碁に興じながら、「そこは“せき”でしょう、このあたりの“こう”をまず片付けましょう」など、“こう”や“せき”といった囲碁の用語が使われているので、紫式部に囲碁の素養があり、読者もその専門用語が十分に分かっていたと言われています。それにしても、その頃に使われていた専門用語が今も使われているなんて驚きです。
(撮影:風俗博物館)
思うようにならないからハマってしまう!
双六(すごろく)
平安時代の双六は現在、私たちが知っている紙の上を進む「双六」ではなく、双六盤という台の上に作られた区画に黒白各15個の駒を置き、交互にサイコロを振ってその目数によって駒を進める遊びです。
双六は碁と共に人気の遊びで、『枕草子』の「つれづれなもの(手持ち無沙汰なもの)」の段に「下りぬ雙六(駒が進まない双六)」とありますし、強大な権力を持った白河法皇も自分の意にならないものとして「賀茂川の水、双六の賽、山法師」と、双六の賽(さい=サイコロ)をあげています。それほど、みな熱中したのですね。
■■参考サイト■■
宮内庁HP
風俗博物館
いつきのみや歴史体験館
なぶんけんブログ – 奈良文化財研究所
同志社女子大学 教員によるコラム
日本玩具博物館