今年もあっという間に師走ですね。大晦日といえば年越しそば。京都府内各地には、それぞれの特色を活かしたご当地そばがあるのをご存じですか? 全国的に知られている有名なものから、隠れたご当地そばまで、年越しにいただきたい京都のご当地そばをご紹介します!
※記事中の情報・金額はすべて2024年12月時点・税込表記です。
伊根町の筒川そば粉と宮津の美味しいものがコラボ
【宮津市】 龍宮そば(筒川そば)
舟屋で知られる丹後半島にある北端・伊根町の山間部、筒川地域では昔から良質なそばが獲れるとされ、そばの栽培が盛んな地。
日本三文殊のひとつとして有名な天橋立の智恩寺門前に店をかまえる「龍宮そば」では、その筒川そば粉で手打ちされた二八そばがいただけます。
中でも人気は「文殊御前」(2,105円)。ざるそばに海老天や野菜の天婦羅に宮津の黒ちくわの天婦羅が付くというもので、そば汁は与謝野町の岩滝で作られている地醤油を使用しているのだとか。
さらにデザートとして智恩院門前ならではの「智恵の餅」が付くというもの。まさに丹後ならではのそばを堪能できます。
■■INFORMATION■■
龍宮そば
京都府宮津市字文珠472-1
TEL:0772-22-5807
営業時間:11:00~18:00
定休日:不定休
丹波の霧が育てた香り高いそば
【福知山市】 やくの農業振興団(京蕎麦 丹波ノ霧)
兵庫県との県境近く、福知山市の夜久野町。京都府で唯一の火山・宝山の麓にあり、黒ボク土(火山灰)の肥沃な土壌に覆われた夜久野高原は霧が多く、昼夜の寒暖差が大きいことから良質のそばが育つ地です。
50年ほど前は「夜久野蕎麦」の産地として有名でしたが、近年は生産量が減少。しかし「夜久野のそばをもう一度食べたい!」という声から近隣の農家が協力し、生産が再開されました。
やくの農業振興団では、その福知山・夜久野産のそば粉を使い「乾麺」と「半なま麺」を販売。蕎麦の実の外皮を取り除いて挽いた「丸抜き粉」に、粉砕したそば殻(星)を散らした食感も楽しいそばです。雑味が少なく、そば本来の香りとそば殻の食感が楽しめます。
画像(左):「半なま 京蕎麦 丹波ノ霧 」(1,296円) 内容:半なま麺80g×2、濃縮つゆ25ml×2
画像(右):「乾麺 京蕎麦 丹波ノ霧」(864円) 内容:乾麺160g(2人前)、濃縮つゆ25ml×2
■■INFORMATION■■
やくの農業振興団
京都府福知山市夜久野町高内17-5
TEL:0773-37-0002(8:00~16:00)
定休日:土日祝
販売:やくの農業振興団https://shinkoudan.thebase.in/
「お茶の京都」ならではのご当地そば
【南山城村】 道の駅お茶の京都 みなみやましろ村 食堂「つちのうぶ」(茶そば)
鮮やかな緑色の麺に風味豊かな抹茶の香り、サッパリとした後味。「お茶の京都」ならではの茶そばも、京都を代表するご当地そばのひとつですよね。
茶そばが食べられるようになったといわれるのが、江戸時代中期の頃。その誕生に大きく影響したのが、そば殻を外し、胚乳の中心部分を挽いた一番粉で打つ更科そばの登場でした。また、水よりも楽にそばを打てる湯ごねの技術が普及したことで作られるようになったのが、変わりそばの一種である「色物」。茶そばもこの色物のひとつで、更科の「白」や海老切りの「赤」と合わせて縁起物の「三色そば」として提供されていたとのこと。三色そばは、当時流行した「雛そば(※)」の行事が関係しているそうです。
現在、茶そばは宇治市内をはじめ、京都府内各地域で食べられています。道の駅お茶の京都 みなみやましろ村内にある「食堂つちのうぶ」では、上質な抹茶をふんだんに練り込んだ、村抹茶そばが人気。
身も心もポカポカになる温かい「かき揚げそば」(1,000円)や「にしん茶そば」(1.350円)、お茶の風味がより感じられる「ざる」(900円)があり、どちらも違った味わいが楽しめます。香り豊かなほうじ茶で炊いた茶飯が付く「定食」にすることもできますよ。
※雛そば…江戸時代中期から始まったといわれる行事食。ひな祭りの翌日、ひな人形を納めるときにそばを供える風習が庶民の間で広まった。年越しそばと同様に、寿命を伸ばし、家運を高めたいという思いが込められている。
■■INFORMATION■■
道の駅 お茶の京都 みなみやましろ村
京都府相楽郡南山城村北大河原殿田102
TEL:0743-93-1392
営業時間:9:00~18:00
食堂「つちのうぶ」
モーニング:8:00~9:30、土日祝 / 7:30~9:30
ランチ:11:00~16:00
定休日:6月第3水曜日・12月第2水曜日
海がない京都市でニシンが食べられるようになった理由
【京都市】総本家にしんそば松葉(にしんそば)
「京都のご当地そば」と聞くと、温かいそばの上に大きな身欠きニシンの甘露煮がのった「にしんそば」を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。
ですが、海がない京都市でにしんそばが食べられているなんて不思議ですよね。北海道産のニシンが京都に流通するようになったのは江戸時代初期、北海道の南西部にある渡島(おしま)半島に松前藩が置かれた頃に始まります。当時、松前藩にはさまざまな特産物があったものの米の収穫がなく、特殊な経済制度を敷いていました。
そこに現れたのが、既に全国的なネットワークを築いていた近江商人たちです。彼らは、松前に出店を開き、ニシンや昆布、干しあわびといった産物を京都や大阪などで売りさばき、米、味噌、醤油、漁具などを松前に運んで商いをしていました。
こうした松前藩と近江商人たちとの通商は「松前渡海船」と呼ばれ、後に航路の延伸などにより「北前船」と呼ばれるようになりました。また、京都では寺院での行事食としてそばを取り入れていたところが多かったことから、うどん文化の関西の中でもそば文化が浸透したといわれています。
このように、ニシンとそばを食べる文化が京都に根付いていたことにヒントを得て、「にしんそば」を考案したのが、1861(文久元)年創業の老舗・松葉(現:総本家にしんそば松葉)です。この、「にしんそば」(1,870円)は京都の人々に喜ばれ、他のそば店でも提供されるようになり、今では京都のそばを語る上で欠かせない逸品となりました。
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総本家にしんそば 松葉
京都府京都市東山区四条大橋東入ル川端町192
TEL:075-561-1451
営業時間:11:00~20:30(20:15 L.O.)
定休日:水曜日(祝日の場合は営業)※季節により変動あり
※松葉本店は、12月は無休
12月31日は21:00L.O.、21:30閉店。2025年1月1日の営業は10:30~18:00